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株式会社スプロテック
(神奈川県小田原市)

奥津さん 株式会社スプロテックは1985年(昭和60年)創立。システム開発、ソフトウェア開発を、きめ細かく行っている。
従業員数は4名(2025年5月現在)。
今回は、代表取締役の奥津篤さんからお話を伺った。
従業員数4名だが、従業員のメンタルヘルスのために必要性を感じ、ストレスチェック実施と産業医契約を行っている。
まず、ストレスチェックの実施状況についてお話を伺った。
ストレスチェックの実施義務はありませんが、当社に必要だと考え実施しています 「ストレスチェックは、2022年12月から毎年1回実施しています。当社の従業員数は4名なので実施義務は無いのですが、従業員のメンタルヘルスについてずっと考えていましたので、健康経営の話の中でストレスチェックのことを知って実施することにしました。」
「ストレスチェックは、職業性ストレス簡易調査票の57項目で、オンラインで受検できる有料の仕組みを使って実施しています。実施者は、ストレスチェック業者にお願いしており、私は当然ストレスチェック結果の詳細を聞くことはありません。」
産業医契約も行い、高ストレス者へのケアも充実しました 「ストレスチェックをはじめて2年目からは、産業医の契約も行いました。ストレスチェックの結果、高ストレスになった者には医師による面接指導が勧められ、オンラインで実施をしたようです。」
長時間労働をさせないために、仕事の受注の仕方を工夫したり、いち早く在宅勤務を導入したり、従業員に裁量のある勤務時間の管理を行ったり、柔軟で効率的な働き方を実現している。
次に、従業員の心身の健康を守るためのその他の取組みについてお話を伺った。
2000年以前から長時間労働を前提とした仕事の仕方を変えることに取り組んできました 「当社は1985年に先代が創立し、2000年12月に私が引き継ぎました。従業員数は4名、役員を含めて7名体制です。」
「従業員の健康には、先代の頃から取り組んできています。当社はIT業界の会社ですので、もともとは長時間労働が多くなりがちでした。ですが、従業員の多くは長年勤めていますので、当然平均年齢はどんどん上がっていき、体力面も厳しくなっていきます。そうした状況を踏まえて、長時間労働を前提とした仕事の仕方から脱却する必要性を感じ、様々な取組みを行ってきました。」
長時間労働をさせないですむ仕事の受注を意識しています 「まず、仕事の受注の仕方を変えました。当社の主な仕事はソフトウェアの開発です。仕事の受注の仕方には2パターンあり、それぞれ対応を行いました。1つは、開発要件を聞いて、見積もりを出し、契約を締結して開発を行う形です。こちらは、期限内に開発が終わらないときに残業をして間に合わせるということになりますので、見積もりの精度を上げ、期限内に必ず仕事が終わるような受注の仕方をすることを意識しています。そのためには、従業員の技術的な精度を上げるということも同時に大事だと考えています。」
「もう1つは、お客様の事業所に従業員を派遣して業務を行う形での仕事の受け方です。こちらは、お客様の都合によって残業が発生することがあるのですが、お客様にご理解いただいてできるだけ残業させないですむようにしています。」
「こうした仕事の調整は、規模が小さいからこそできることだと思います。」
1990年代から在宅勤務を導入し、効率的な仕事の仕方を意識しています 「また、在宅勤務も1990年代から導入していました。当時はインターネットも今ほど高速ではなかったので、仕事用の回線を従業員の自宅に引くサポートをしたりしました。お客様からお借りしている機材を使っての作業もあるので、それは事務所に来てもらう必要がありますが、それ以外の仕事は自宅で行う形で長年続けています。」
「このような取組みによってコミュニケーションの支障を感じたことはありません。普段はチャットでのやりとりを中心にしており、定期的にオンラインでの打ち合わせも実施しています。また、勤怠管理システムは、在宅勤務導入当時に自社に合ったものを独自制作し、今でも使っています。」
幅を持たせた勤務時間にすることで、従業員一人ひとりが自身の健康面に合った働き方ができ、パフォーマンス向上につながっています 「従業員の裁量も大事にしています。当社は年俸制を採用していて、従業員が会社に対して給料の金額を交渉して決め、それを12等分して支払うという契約にしています。また、既定の労働時間のうち85%以上の時間を働けば、給料は全額支払う、残業代も何時間分までは既定の給料に含む、という幅のある契約内容としています。これらの就業規則は、地元の労働基準監督署に何度も通って、確認しながら策定しました。労働基準監督署に行けば親身になって相談対応してもらえました。」
「従業員の中には、さまざまな持病を抱える者もいます。体調が悪い時は遅れて勤務を開始してもいいですし、通院が必要な時は休んでもいい、自分の健康面に合わせた働き方をしてもらうことで、効率的にパフォーマンスの良い仕事をしてもらえていると感じています。」
「85%以上の時間を働けば給料は全額支払うからといって、じゃあ85%しか働かない、ということにはなっていません。従業員一人ひとりが、技術者として長年務めているので、それぞれが自分の仕事内容を理解しています。私たちの仕事は、お客様に期限内になんらかの成果を出すということなので、それが達成できるように、一人ひとりが仕事の状況を管理しながら進めてくれています。」
メンタルヘルス対策は会社の生存戦略の一つであり、社員一人ひとりが健康に効率的に仕事を進めるための「インフラ」と考えている。
最後に、従業員の健康への取組みに対する想いについて伺った。
メンタルヘルス対策の取組みは、コストでも投資でもなく、会社のインフラだと考えています 「当社は規模が小さな会社です。昨今の状況で従業員を新たに採用することは非常に難しく、今いるメンバーでやっていくしかありません。そのためには、従業員に長く健康に働いてもらうことで、パフォーマンスを上げていくしかないと考えています。」
「そうした意味で、ストレスチェックや健康経営の取組みは、会社にとってメリットであり、会社の生存戦略の一つでもあると考えています。こうした取組は、コストでも投資でもなく、電気やガスと同じ、会社のインフラという考え方です。」
「病気で欠勤してしまったら働けません。それで会社として仕事がまわらなくなることも過去に経験しています。今は、持病を抱える従業員もいますが、だから仕事ができないというわけではなく、むしろ当社にとって大切な技術力をもつ仲間だと思っています。私たちがサポートすることで、効率よく仕事をしてもらうことができています。働く環境を整えるために必要なことは会社が当然準備する、メンタルヘルス対策の取組みは当社においてはインフラだと考えています。」
【取材協力】株式会社スプロテック
(2025年7月掲載)